今月の誕生者は2名。その内男性Nさんは、トレンディー俳優を思わせる甘いマスク。
身だしなみに気を遣い、鏡の前に立てば髪の乱れを直し、仕上げは前髪を横流しにスタイリング。
さらに、自分の座席が後方者のテレビ鑑賞の妨げになるからと、位置をズラしては自身を狭い角に追いやる、内面も紳士な方です。
もう1名の女性Tさん。今でこそ口数が減りましたが、以前は職員の名前を呼んでは私たちの心を温めてくれました。認知症を患うと、家族ならともかく他人の名前を覚えることは難しいものです。利用者さまから名前で呼ばれることは以外にも少なく、だからこそ、小さな肺活力を振り絞り、自分の名前を呼んでくれた時にはとても嬉しくなるのです。
また名前を呼んでもらえるように、体力・精神力向上のお手伝いをさせて頂きます。
誕生会の催しの一つとして企画した風船バレー。
最初は、いくら軽い風船であれ、反応速度が間に合うかどうか疑問でしたが、以外にも優れた動体視力に驚かされました。軽いトスが主流の中、パンチで真正面に打ち返す方や、打たずにキャッチする方などもいて、場を一層盛り上げてくれました。
昔、お茶の間のアイドルだった〝きんさんぎんさん〟が、バッターボックスに立つイチローのすぐ目前で応援する、そんなテレビコマーシャルがありましたが、いつの日か、高齢者が打席に立つ世界が訪れるかもしれません。
ちなみに、〝きんさんぎんさん〟がテレビで活躍していた時期、認知症状や活力が向上したそうです。
コロナ渦だからこそ、こうやって人々が一体となり、楽しめる環境が大切だと思います。(もちろん除菌や体熱の計測で対策はしていますよ)
制限を設けながらも、面会も先々月から行っています。
それ以前、オンラインの面会でこんなことがありました。
中継を理解できない利用者さまが、「なんで芸能人ではない娘がテレビに映っているの?」
と目を丸くしたのです。疑問が頭から離れず、しばらくは家族との会話が滞ってしまいました。
高齢者には馴染みが薄いITの世界ですが、コロナ渦の前から、クラウドワークスやノマドウォーカーなど、ネットで繋がる仕事形態があります。
介護業界でも、ケアマネに関しては、いずれ職場は自宅となり、リモートでやり取り、書類は送信するなどと、未来の形態を予測する専門家もいました。
現場でオンラインはあり得ないかもしれませんが、活躍するIT、AI技術だと、例えばセンサーは行動や睡眠状態、呼吸や心拍数などを知らせてくれたり、排せつを感知、処理してくれる物もあります。掘り下げれば、ナースコールもAI技術です。
ロボットならば、会話やレクリエーション、移乗を介助したり、介護士の移乗の補助や、単なるペットとして機能するロボットなどがあります。挙げればキリがありませんが、他にも、腰痛をなくすために、力学的に移乗時の姿勢や角度を教えてくれるコンピューターなど、あらゆる角度からITは参入しています。それは、財や人材が不足する中で、未来の希望かもしれませんし、効率化やビジネスモデルの観点からも必要なことなのでしょう(あくまで私個人の見解です)。
それでも私は思います。介護士と利用者さまの関係は、ITでは作れないと。
私たち人間は、風船一個で楽しめるのです。
ロボットより人間です。
つまるところ……介護士さん、募集してまーす!(笑)
〈kathu〉
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